内視鏡内科

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消化管内視鏡診断・治療

内視鏡とは

内視鏡検査とは先端に小型カメラ(CCD)を内蔵した太さ1cm程の細長い管を口あるいは肛門より挿入し,食道,胃,十二指腸や大腸の内部を観察し,診断することです。内視鏡治療は1970年代から行われるようになり,当初は消化管の良性腫瘍(ポリープ)を中心に行っていました。内視鏡の進歩とともに種々の治療用器具も開発され,2000年以降は胃や食道,大腸の早期がんに対する治療が積極的に行われるようになってきました。

内視鏡によるがんの診断

一般的ながんの症状としてあげられるのは,食欲不振,腹痛といった腹部症状がありますが,これらは主に進行がんで起こるもので,早期がんでは症状はほとんどありません。従って早期の病変を発見するためには,症状があるときだけでなく,症状がない場合でも積極的に検査・検診(胃がん検診,大腸がん検診)を受けることが必要です。

検診で異常を指摘されたら,内視鏡検査を受けてください。内視鏡検査では,がんの有無,その他病変の有無を観察します。がんが疑われた場合,組織生検(組織の一部を採取し病理医が『がん』かどうかを診断)を行います。診断には胃と大腸ではグループ分類が用いられます。グループ分類は『1』から『5』まであります。『1』は異常なし,『5』はがんです。『4』はがんの疑いがあるものです。患者さんの中には「グループ5」でしたと説明すると進行度分類(次項参照)と混同されもう助からないと思われる方がおられます。診断に用いるグループ分類はあくまで『がん』か『がんでない』かを診断するものですので混同しないようにしてください。

内視鏡検査はつらい検査と思っておられる方もおられますが,鎮静下(半分眠った状態)での検査も行っています。検査予約時に申し出ていただければ,楽に検査を受けていただけます。

◎グループ分類(胃および大腸)
Group1 正常組織および非腫瘍性病変
Group2 腫瘍性か非腫瘍性か判断が困難な病変
Group3 良性腺腫
Group4 がんが疑われる病変
Group5 がん
GroupX 生検組織診断が出来ない不適材料

がんの進行度

進行度分類(Stage分類)はがんの進み具合を表す分類で,T(がんの深達度)とN(リンパ節転移の有無),M(遠隔転移の有無)で決定します。進行度から治療方針(内視鏡治療,外科手術,抗がん剤治療,緩和ケアなど)を決定します。進行度はがんの発生する部位により多少異なります。食道と大腸は0~IV,胃はI~IVまであり,数字が増えるに従い進行したがんとなります。内視鏡治療が行えるがんは,食道は進行度0の一部,胃は進行度IAの一部,大腸は進行度0~Iの一部です。各進行度分類の黄色い枠の部分です。

◎食道がん【食道癌取扱い規約(2007年4月 第10版)】
食道がんの深さ(壁深達度)

T1a:がんが粘膜内にとどまるもの
  T1a-EP:がんが粘膜上皮内にとどまるもの
  T1a-LPM:がんが粘膜固有層にとどまるもの
  T1a-MM:がんが粘膜筋板に達するもの
T1b:がんが粘膜下層(SM)にとどまるもの
T2:がんが固有筋層(MP)にとどまるもの
T3:がんが食道外膜に浸潤しているもの
T4:がんが食道周囲臓器に浸潤しているもの

食道がん進行度分類(stage分類)
  N0 N1 N2 N3 N4 M1
T1a 0 I II III IVa IVb
T1b I II II III IVa IVb
T2 II II III III IVa IVb
T3 II III III III IVa IVb
T4 III IVa IVa IVa IVa IVb

N:リンパ節転移の有無(N0:転移無し,N1-4:転移あり)
M:遠隔臓器(肺や肝臓,骨など)転移の有無(M0:転移なし,M1:転移あり)

胃がん【胃癌取扱い規約(2010年3月 第14版)】
胃がんの深さ(壁深達度)

T1:がんが粘膜または粘膜下層にとどまるもの
  T1a:がんが粘膜にとどまるもの(M)
  T1b:がんが粘膜下層にとどまるもの(SM)
T2:がんが固有筋層にとどまるもの(MP)
T3:がんが漿膜下層にとどまるもの(SS)
T4:がんの浸潤が漿膜表面に接しているかまたは露出,あるいは多臓器におよぶもの
  T4a:がんが漿膜表面に接しているか,またはこれを破って腹腔に露出しているもの(SE)

胃がん進行度分類(stage分類)
  N0リンパ節
転移なし
N1
2個以下
N2
3-6個
N3
7個以上
M1
他臓器に転移
T1a IA IB IIA IIB IV
T1b IA IB IIA IIB IV
T2 IB IIA IIB IIIA IV
T3 IIA IIB IIIA IIIA IV
T4a IIB IIIA IIIB IIIC IV
T4b IIIB IIIB IIIC IIIC IV

N:リンパ節転移の有無(N0:転移無し,N1-4:転移あり)
M:遠隔臓器(肺や肝臓,骨など)転移の有無(M0:転移なし,M1:転移あり)

大腸がん【大腸癌取扱い規約(2009年1月 第7版補訂版)】
大腸がんの深さ(壁深達度)

M:がんが粘膜にとどまるもの
SM:がんが粘膜下層にとどまるもの
MP:がんが固有筋層にとどまるもの
漿膜を有する部位
SS:がんが漿膜表面に露出していないもの
SE:がんが漿膜表面に露出しているもの
SI:がんが直接他臓器に浸潤しているもの
漿膜を有さない部位
A:がんが固有筋層をこえて浸潤しているもの
AI:がんが直接他臓器に浸潤しているもの

大腸がん進行度分類(stage分類)
  N0リンパ節転移なし N1 N2 N3 M1
他臓器に転移
M 0
SM I IIIA IIIB IIIB IV
MP I IIIA IIIB IIIB IV
SS,A,
SE,
SI,AI
II IIIA IIIB IIIB IV

N:リンパ節転移の有無(N0:転移無し,N1-4:転移あり)
M:遠隔臓器(肺や肝臓,骨など)転移の有無(M0:転移なし,M1:転移あり)

内視鏡治療が出来るがん

ガイドラインでは「内視鏡治療の適応はリンパ節転移の可能性が極めて低くがんが一括切除できる大きさと部位にあること」とされています。内視鏡治療は食道や胃,大腸の内側からがんを切除します。切除できる深さは粘膜下層までで(図1,図2),リンパ節など消化管(食道や胃,大腸)の外側の病変の治療はできません。そのためがんが粘膜下層に深く浸潤している場合やリンパ節などに転移している場合(リンパ節転移の可能性がある病変など)は内視鏡治療の適応とはなりません。治療できるがんはリンパ節転移がなく,粘膜に限局したがんが主となります。各進行度分類の黄色い枠の部分の一部です。

食道がん,胃がん,大腸がんの内視鏡治療適応のガイドラインを以下に示します。専門用語もありますので詳しくは担当医に相談してください。

食道癌診断・治療ガイドライン(2012年4月)
内視鏡的切除の適応

壁深達度が粘膜層(粘膜上皮と粘膜固有層)のうちT1a-EP,T1a-LPM病変

図1:食道がん深達度亜分類
深達度が浅いがん(表在がん)の分類です
図の左端から2つ目(T1a-EPとT1a-LPM)までのがんが内視鏡治療の適応です。T1a-MMからリンパ節転移の可能性が出てきます。

胃癌治療ガイドライン(2010年10月)
内視鏡治療の絶対適応病変

2cm以下の肉眼的粘膜癌(Mがん:T1a)と診断される分化型癌。肉眼型は問わないが,UL(-)に限る。 *がんの分化度には分化型がんと未分化型がんがあります。ULは潰瘍もしくは潰瘍瘢痕のことです。

大腸癌治療ガイドライン(2010年度版)
内視鏡的適除の適応基準

(1)粘膜がん(Mがん),粘膜下組織への軽度浸潤がん(SMがん)。
(2)最大径2 cm未満。
(3)肉眼型は問わない。

図2:胃がんおよび大腸がん深達度分類
Mがん(大腸ではSMがんの一部まで)が内視鏡治療の適応です。SMがんまでが早期癌で,MPがんから進行がんになります。

内視鏡治療の方法(図3,図4)

食道がん,胃がんでは内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が治療の一般的な方法です。ESD(図3)は,がんの周囲に印(マーキング)を付けます。がんの下部の粘膜下層にヒアルロン酸や生理食塩水を注入しがんを浮き上がらせ,周辺を切開します。切開した部位からがんの下部の粘膜下層を剥いで行き,病変全体を切除します。がんを切除してできたきずあと(潰瘍)にある血管の止血処置を行います。切除病変を回収し,病理医が顕微鏡で診断(病理診断)を行います。

図3:内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の方法

大腸がんは多くの場合内視鏡的粘膜切除術(EMR)を行います。EMR(図4)は,がんの下部の粘膜下層に生理食塩水やヒアルロン酸を注入しがんを浮き上がらせます。がんの周囲をスネアと呼ばれる円形状のワイアで締め,スネアに通電し切除します。切除病変を回収し,病理医が顕微鏡で診断(病理診断)を行います。病変によっては内視鏡的粘膜下層 剥離術(ESD)も行います。大腸の場合一般的にはマーキングは行いません。

切除した病変の病理診断で,内視鏡治療だけで十分であった(治癒切除)かどうかの判定を行います。病理診断の結果追加治療が必要となる場合もあります。

図4:内視鏡的粘膜切除術(EMR)の方法

がんの内視鏡治療の原則は一括切除(図5,図6参照)です。EMRもESDも一括切除が出来ますが,切除できる大きさに差があります。EMRはスネアの大きさで切除できる病変の大きさが決まります。一般的には大きさ2cmまでの腫瘍の一括切除が可能です。ESDは周辺切開を行い,粘膜下層を剥離しますので2cm以上の病変でも一括切除が出来ます。当院では長径9cmの病変を一括切除したことがあります。治療時間はEMRがESDに比べ短時間で済みます。

図5:一括切除

図6:分割切除

内視鏡治療ではESD,EMRとも高周波電源装置(電気メス,スネアなど)を用います。病変には血管も入り込んでおり,治療中,治療後に出血する危険性があります。心臓や脳などの病気でワーファリンなどの抗凝固薬や抗血小板薬を服用している方,不整脈で埋め込み型ペースメーカーを使われている方は必ず担当医師に相談して指示に従って下さい。

合併症には出血のほか,穿孔(食道,胃,大腸など消化管の壁に穴が開くこと)や腹膜炎などがあります。

おわりに

内視鏡検査は診断から治療まで行える検査であり,病変に直接アプローチできる方法です。内視鏡治療ができる状態でがんを発見することが重要です。そのために検診や内視鏡検査を定期的に受けていただければと思います。<

また判らないことや不安がありましたら専門医にお気軽にお尋ね下さることをお勧めします。

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