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佐々木 民人ささき たみと

部長

専門

消化器内科
膵臓・胆道の診断と治療

資格・その他

日本内科学会認定医
日本消化器病学会専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会専門医・指導医
日本胆道学会指導医
広島大学医学部臨床教授
臨床研修指導医養成講習会修了

内視鏡がもたらす膵臓がん診療の変化

私はこれまでに消化器の中の胆膵(胆道・膵臓)疾患を専門として研究・臨床に励んでまいりました。私が胆膵の臨床をはじめた19年前には,膵臓がんでお亡くなりになる方は年間約17000人でしたが,年々死亡者数は増加し2014年のがん統計予測では,死亡者数31900人となっております。死亡者数では,肺・胃・大腸に次ぐ第4位の臓器となり,肝臓の死亡者数を越えてしまいました。今回は,膵臓がんに関する最近の情報を紹介いたします。

医療の進歩した現在においても,罹患された方のほとんどがお亡くなりになっているのが膵臓がんの現状ですが,最近では膵臓に腫瘤(かたまり)を作る前の段階でのがんが見つかるようになってきました。膵臓がんの家族歴がある方,慢性膵炎のある方,糖尿病の経過観察中に血糖コントロール不良になった方,高齢で初めて糖尿病を発症した方は膵臓がんの可能性が高いことがわかっています。また他の病気や健康診断の際に,主膵管拡張や膵のう胞を指摘された方も要注意です。これらのリスクをお持ちの患者様には,MRCP(MRIをつかった膵管描出法)や超音波内視鏡(EUS)検査を受けていただくことがお勧めされており,これらの検査で異常がある場合には,さらに詳しい入院検査(膵管造影・膵液細胞診)を受けて頂くことになります。このようなきっかけで診断される膵臓がんの患者様は,膵臓の実質に浸潤を認めない上皮内癌(Stage 0)である場合が多く,手術を受けて頂くことにより膵臓がんの完治が得られています。

一方で,腫瘤で発見される膵臓がんの患者様には,確実な組織診断を得る目的で超音波内視鏡下膵生検(EUS-FNA)が行われるようになってきました。体の深部にある膵臓はこれまで組織検査が難しい臓器でしたが,超音波内視鏡を用いることにより膵臓の近傍の胃・十二指腸から確実に組織を採取することが可能となってきております。CT検査では同じような腫瘤として描出される膵臓がんも,病理組織学的には単一の組織像ではなく色々な腫瘍が混ざっていることが知られています。確実な組織診断を行うことにより,適切な手術,適切な抗がん剤の選択が行えるようになり,治療成績の向上が期待されています。

最後に,進行した状態の膵臓がんの患者様に対する診療も変わりつつあります。膵臓がんによる胆道閉塞に対しては,内視鏡的に胆道ステントが挿入されてきましたが,がんによる消化管閉塞に対しても積極的にステント治療が行われるようになってきました。内視鏡のチャンネルを通して,金属製のステントを消化管に挿入させていただくことにより,これまでの胃・空腸吻合術とほぼ同等に食事を摂取していただくことが可能となっております。手術と比べると患者様への侵襲度は極めて低いために,QOLの低下した患者様であっても施術可能となっています。