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前立腺がん

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前立腺がんの放射線治療について

はじめに
 前立腺がんは,高齢者に多く発症するがんで,近年増加傾向にあります。PSA(前立腺特異抗原:採血により測定する腫瘍マーカー)による検診の普及で最近は早期に診断される割合が増えています。主な治療方法としては,手術療法,放射線治療,ホルモン療法があります。早期例の場合では定期的にPSAを測定しながら経過を見る待機療法の選択も可能です。病変が前立腺に限局している場合は手術療法または放射線療法が治療の中心になります。放射線療法には,体の外部から放射線を照射する外部照射と放射線を出す線源を前立腺に埋め込んで内部から放射線を照射する小線源治療があります。早期の前立腺がんに対して,手術療法,外部照射,小線源治療の治療成績は同等とされています。
外部照射について
(1)対象
 病変が前立腺内部に限局している患者さん,および,病変が前立腺周囲に広がっている患者さん,いずれも対象になります。また,骨盤内のリンパ節に転移を生じている場合でも治療可能です。ただし,ある程度進行した患者さんの場合は,ホルモン療法を併用する必要があります。
  (2)治療方法
 リニアックを用いて外部から放射線を病巣部に照射する治療です。当院では,正確な治療を行うため,前立腺の位置を治療室内のCTで確認し,位置を微調整した後に放射線を照射する画像誘導放射線治療(IGRT)を用いています。通常,6方向から放射線を前立腺に集中させるように照射します。治療時は治療位置の確認等の時間を含めて15分程度治療台の上で安静にして頂きます。実際の照射時間は1〜2分程度で,放射線は全く体に感じません。月〜金,毎日1回で合計37回の治療を行います。放射線の量は1回2Gy(グレイ)で合計74Gyになります。骨盤内のリンパ節に転移がある患者さんの場合は,23回(46Gy)まではリンパ節を含めて治療を行います。
 通院での治療が可能で,治療期間中は日常生活に特別の制限はありません。
 
当院のリニアック ラルス 小さな線源を出し入れする機器
当院のリニアック 治療室内のCT
黒斜線部:前立腺、赤点線部:放射線があたる範囲 断面の図 5方向から放射線を照射
黒斜線部:前立腺
赤点線部:放射線があたる範囲
断面の図
6方向から放射線を照射
  (3)効果と副作用
 放射線治療の効果で腫瘍は縮小します。しかし,前立腺がんは画像での評価は困難なことが多く,通常はPSAの数値により効果を判定します。治療後は3カ月ごとにPSAを測定し数値が下がることを確認します。
 放射線治療の副作用としては,治療期間の後半に,尿回数の増加,残尿感,排尿痛,残便感,排便時違和感など排尿や排便に関する症状が出現します。これらは終了後数週間程度で軽快します。稀に,治療終了1〜2年後,血便や血尿が出ることがあります。通常は,無治療で経過観察することで治り,処置を要することは稀です。また,治療後に性機能障害(勃起障害)が生じることがあります。
  (4)当院の治療成績
 2008年〜2014年に前記の方法で治療した前立腺がんの患者さんは73人です。2015年1月の時点で,3人が別の疾患で死亡されましたが,その他の70人は生存中です。リンパ節転移を生じた患者さんが1人と,明らかな再発は認めないもののPSAが上昇したためホルモン療法を開始した患者さんが1人おられます。他の68人は再発なくPSAの上昇もなく生存中です。4年のPSA非再発率(再発なくPSAの上昇もない確率)は95.1%でした
小線源治療について
(1)対象
 本治療法は日本では2003年に認可されて治療が開始されました。現在は,国内に広く普及し,前立腺がんに対する優れた治療法として確立されています。この治療の対象になるのは前立腺内に病変が限局している患者さんです。病変が前立腺の周囲に広がっている可能性がある場合(PSAの数値や細胞の悪性度などで判断)は,外部照射やホルモン療法を併用して治療を行います。使用できる線源の数の問題から,前立腺の体積が大きい場合(40cc以上)はこの治療を行うことが出来ません。ただし,数ヶ月のホルモン療法で前立腺が縮小したときは治療可能です。
  (2)治療方法
 放射線を放出する線源を前立腺に埋め込むことにより前立腺に集中的に放射線を照射する方法です。使用する線源は,放射性ヨード(I-125)を小さなチタン製のカプセル(0.8×4.5mm)に封入したものです。全身麻酔を行った上で,超音波画像で位置を確認しながら,会陰部(陰嚢と肛門の間)から前立腺に針を刺入し,線源を挿入します。治療には4日間の入院が必要ですが,治療に伴う全身的な影響はほとんどありません。使用する線源の数は40〜90個程度で,線源から出る放射線の量は時間が経つにつれて減少し,1年でゼロになります。その後も金属のカプセルが前立腺内に永久に残りますが,そのことにより何らかの問題が生じることはありません。
 
ヨード線源(長さ4.5mm 直径 0.8mm) 線源の挿入方法(直腸からの超音波画像で位置を確認しつつ線源を挿入します)
ヨード線源
(長さ4.5mm 直径 0.8mm)
線源の挿入方法
(直腸からの超音波画像で位置を確認しつつ線源を挿入します)
線源挿入後のレントゲン写真 前立腺部に多数の線源が見える 線源挿入後のCT写真 体の断面を下から見た図 前立腺の辺縁部分に線源が見える
線源挿入後のレントゲン写真
前立腺部に多数の線源が見える
線源挿入後のCT写真
体の断面を下から見た図
前立腺の辺縁部分に線源が見える
  (3)注意事項
 前立腺内に埋め込んだヨード線源からは微量ですが体の外部に放射線が出ます。尿,便,汗,唾液など分泌物には放射能は全くありません。通常の日常生活には支障はなく,同居されている家族の方への影響も問題ありません。ただし,小さな子供さんを長時間抱くことやひざの上に乗せることを治療後数ヶ月間は避けて頂いています。また,線源の管理上の問題から,線源挿入後1年以内に死亡された場合には,線源を前立腺ごと摘出する必要があります。治療後1年間は「治療カード」を携帯して頂きます。
  (4)効果と副作用
 放射線の治療効果は徐々に現れ,完全に効果が出るには1年以上かかります。治療後は3カ月ごとにPSAを測定し数値が下がることを確認します。前立腺内に限局した前立腺がんに対する成績は非常に良好ですが,前立腺がんは進行が遅いために長期間の経過観察が必要です。
 手術中およびその後の数日間は,血尿や排尿障害がある程度出現します。まれに症状が強く一時的に尿道にカテーテルを留置することがあります。
 放射線による主な副作用は,頻尿(排尿回数の増加),排尿障害(勢いがない,とぎれる,時間がかかる,まれに排尿痛)などで,治療後1ヶ月頃から生じて6ヶ月程度で消失します。稀に,治療数年後頃に,血尿,尿道狭窄による排尿障害,血便,などを認めることがあります。また,治療後,性機能障害(勃起障害)を認めることがあります。
 その頻度は年齢により異なりますが,他の治療法(手術,外部照射,ホルモン療法)に比べると少ないとされています。
  (5)当院の治療成績
 2006年から2014年に本治療を行った患者さんは199人です。この内4人は別の疾患で死亡されました。2014年3月の時点で,他の195人は生存中で前立腺がんが原因で死亡した患者さんはいません。リンパ節への再発を生じた患者さんが1人と骨転移が生じた患者さんが1人おられます。他に再発は明らかではありませんがPSA値が上昇したためホルモン療法を開始した患者さんが7人おられます。その他の186人の患者さんは再発や転移は認めていません。4年のPSA非再発率(再発なくPSAの上昇もない確率)は95.2%でした。
再発や転移に対する治療について
 前立腺がんの手術後の局所再発(切除部周囲の再発)に対して放射線治療は有効です。この場合は外部照射で治療を行います。治療方法は前述の外部照射の方法と同じですが,治療回数は32回程度になります。
 ホルモン治療後の前立腺部の再発に対しても転移がない場合は放射線治療が有効です。この場合は外部照射と小線源治療ともに可能です。治療方法は前述の通りです。
 前立腺から離れた部位に転移がある場合は,ホルモン療法や化学療法による全身療法が治療の中心になります。しかし,転移病巣による症状がある場合は,症状を緩和するために放射線治療は有効です。治療方法や治療回数は病変の部位や範囲により異なります。前立腺がんは骨に転移する頻度が高く,骨転移による疼痛に対して放射線治療は非常に有効です。病変の部位や範囲により外部照射またはストロンチウム治療を行います。詳細は骨転移の放射線治療についての項を参照下さい。
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