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膵管拡張・膵のう胞には,E・U・S

検診で,膵管拡張・膵のう胞を指摘され,2次検診の通知を受けることがあります。無症状のことが多く,2次検診の必要性に疑問を感じていらっしゃる方も居るのではないでしょうか?

膵管とは,膵臓内を走行する管で,膵臓で作られた膵液の通り道です。2mm以上を膵管拡張と言います。膵のう胞とは,膵臓にできた液体が溜まった袋状のものです。腫瘍性と非腫瘍性がありますが,検診の段階では,両者の振り分けはできていません。良性で経過観察可能な膵管拡張・膵のう胞もありますが,2次検診を受けて,膵がんに併発した膵管拡張・膵のう胞を見落とさないことが重要です。

膵臓の検査

膵臓の2次検診として,CTやMRIも有用ですが,今回は,超音波内視鏡検査(EUS)について,解説します。EUSとは少し聞き慣れない検査ですが,内視鏡先端の装置で行う胃十二指腸経由の超音波観察検査です。体表面からの腹部超音波検査との最大の違いは,目的の臓器に近接して観察できることです。そのため,画質が非常に良好で,CTやMRIで観察できない膵内部の詳細な構造や1cm以下の小さな腫瘍などを観察することが可能です【図1】。EUSは胆嚢ポリープや消化管粘膜下腫瘍の診断にも有用です。

検査は通常内視鏡とほぼ同様ですが,検査時間が多少長く(15~30分)なることもあり,鎮静剤の点滴をしながら行います。内視鏡を飲んでいただくという難点はありますが,外来で可能で,CTやMRIのような被爆の問題もないことが利点です。

検査は,EUSに習熟した専門医が行います。膵管拡張・膵のう胞には,E・U・Sを合言葉に相談していただければ幸いです。

【図1】精密検査画像(例)膵管拡張

CT

CT

MRI

MRI

EUS

EUS

CT,MRIでは,限局した膵管狭窄(矢印)と尾側膵管拡張(この場合の尾側とは,向かって右方向です)のみの指摘しか,できませんでした。EUSを行ったところ,9 X 8mm大(点線)の微小陰影を指摘することができました。

EUS等で,更なる精査が必要と判断した患者さんには,入院での超音波内視鏡ガイド下穿刺術(EUS-FNA)や,内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)を行います。EUS-FNAは,EUS観察に引き続き,専用の生検針にて行う病理診断です【図2,3】。

【図2】EUS-FNAに用いる超音波内視鏡です。超音波観察のためのプローブと,専用の穿刺針を通す鉗子孔を有しています。

【図2】
EUS-FNAに用いる超音波内視鏡です。超音波観察のためのプローブと,専用の穿刺針を通す鉗子孔を有しています。

【図3】EUS-FNAの実際 経胃ないし経十二指腸的に,腫瘍を超音波観察し,穿刺針を腫瘍に穿刺し,吸引組織診を提出します。

【図3】EUS-FNAの実際
経胃ないし経十二指腸的に,腫瘍を超音波観察し,穿刺針を腫瘍に穿刺し,吸引組織診を提出します。

本邦において,2010年4月より保険収載され,本手技の普及が急速に進んでいます。主に以下の疾患が,EUS-FNAの対象疾患となります。

誘発薬剤

①膵充実性腫瘍(良悪性の正診率は約90%)

②腹腔や縦隔内のリンパ節腫大,後腹膜腫瘍

③消化管粘膜下腫瘍

このほかに,治療目的のEUS-FNAも行っています。

ERCPは,専用の内視鏡(側視鏡)を十二指腸乳頭まで挿入し,造影カニューレで胆管/膵管を造影し,レントゲン撮影を行う検査です。膵管の詳細な情報を得た上で,膵液採取に伴う細胞診を行うことが可能です。膵液細胞診の精度は施設間のバラつきが大きく,正診率30~70%とEUS-FNAに比較し劣っていますが,EUS-FNAでは診断困難である腫瘍陰影の存在しない膵管狭窄病変や,膵嚢胞疾患の病理診断にはERCPが有用です。

症例に応じて,EUS-FNA及びERCPを組み合わせて,診断および治療方針(経過観察を含む)の決定を行っています。EUS-FNA,ERCP共に,数%ですが膵炎などの偶発症もあり,全例入院で施行しています。検査当日は,絶食が必要となり,点滴で経過をみます。

【図1】精密検査画像(例)膵管拡張の患者さんには,EUS-FNA,ERCP両方を受けていただきました。ERCPに伴う膵液細胞診では診断がつきませんでしたが,EUS-FNAで膵癌の確定診断を得ることができました。後日,外科手術を受けていただき,Stage I膵がんと確定しました。

《広報誌「もみじ117号(2019.3)」に掲載しました》

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