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肺がんの手術療法

肺がんとは

肺は空気の通り道(気道)と酸素と二酸化炭素を交換する場所(肺胞)とで成り立っています。肺がん気道または肺胞から発生して無秩序に大きくなり,肺を壊すだけでなく,血液やリンパの流れにのって他の臓器(脳,骨,肝臓など)に転移して生命を脅かすできもの(悪性腫瘍)の総称です。肺がんは50歳頃から増加しますが,その多くは60歳以上です。そのため日本の高齢化とともに肺がんによる死亡率は毎年増加しており,男ではがんによる死亡の第1位(女性は第2位)となっています。

その原因として一番に喫煙が上げられます。1日の喫煙本数×喫煙年数が400以上(例えば20本×20年間以上)の人は肺がんの発生が高い(高危険群)とされていますが,最近,喫煙経験のない女性の肺がんが増加傾向にあり,近い将来男女ともがんによる死亡の第1位になることが確実視されています。

肺がんの手術療法

肺がんの治療法は主に,手術療法,化学療法,放射線療法などが単独あるいは組み合わされて行われています。肺がんが早期に発見できれば,手術で切除してなくす方法が最も確実な治療方法と考えられていますが,手術ができるかどうかも含めてその治療方針は腫瘍の大きさ,リンパ節への転移の有無,多臓器への転移(遠隔転移)の有無の3つの要素によって決まる進行具合(病期診断)で治療法が決定します。

当院の肺がん手術は基本的に胸腔鏡下手術による低侵襲手術であり,手術創も小さく早期回復が期待できます。胸腔鏡下手術とは1.5cm程度と6〜8cm程度の2箇所の創から胸の中に胸腔鏡(内視鏡)を挿入した後,ビデオモニターを観ながら(テレビの画面に胸の中が映し出されます)行う手術です。痛みの原因となる筋肉・神経の損傷が少なく,術後の創部痛が開胸手術に比べはるかに軽減され低侵襲手術で早期退院が期待できます。

胸腔鏡下手術

胸腔鏡下手術

胸腔鏡下手術

胸腔鏡下手術

胸腔鏡下手術による手術創

胸腔鏡下手術による手術創

肺がんの進行度と手術適応

検診などの胸部レントゲン(X線)写真で肺がんを疑うような異常陰影が指摘された場合には外来通院で行える胸部コンピューター断層(CT)検査,全身ポジトロンエミッション断層(PET)検査,頭部核磁気共鳴画像(MRI)検査を行って進行具合を判定(病期診断)します。肺がんと診断された典型的な症例の画像を提示しますが,矢印が肺がんのある部位で右肺の上葉という場所にあります。

胸部X線写真

胸部X線写真

胸部CT画像

胸部CT画像

全身PET画像

全身PET画像

さらに肺がんは組織型により治療方針や使用薬剤が異なるため病理医による病理組織学的検査での診断が重要と考えられています。そのためには腫瘍の一部(組織)を採って顕微鏡で調べる必要がありますが,局所麻酔による気管支鏡検査やCTガイド下針生検,あるいは全身麻酔による胸腔鏡下肺生検のいずれかの方法で組織を採り確定診断します。

組織型が腺がん,扁平上皮がん,大細胞がんなどの非小細胞肺がんの場合にはI期,Ⅱ期の早期肺がん(腫瘍の最大径が7cm以下,リンパ節が腫瘍のある肺の付け根までに留まり遠隔転移の無いなど)が手術療法の良い対象となりますが,ⅢA期の一部の進行肺がん(腫瘍の最大径が7cmより大きい,腫瘍が縦隔,気管,椎体などに直接浸潤しているなど)でも術前治療が有効であった場合には手術適応となります。進行が速く化学療法が効果的な小細胞肺がんの場合はI期などの極めて早期の場合が手術の対象となります。

肺の切除範囲について

手術は腫瘍の占拠部位とそのサイズで肺をとる範囲が異なりますが,術前に肺機能検査で術後の肺機能を予測した後,手術に耐えられるかどうかを判定して切除範囲(術式)を決定します。肺は右側が3つ(上葉・中葉・下葉),左側が2つ(上葉・下葉)の肺葉で構成されていますが,一般的には1階から3階まで休まずに上がれる状態であれば,肺葉切除は可能であり,5階まで上がれる状態であれば,一側肺全摘が可能と考えられています。

手術時間,入院経過,合併症について

標準的な肺葉切除+リンパ節郭清術の場合は,手術時間は約2時間,肺部分(楔状)切除であれば約1時間で,いずれも輸血をしないことがほとんどです。手術前日に入院して,術後約7日前後で退院できることを目標にしており,平均入院期間は約9日前後です。重篤な合併症がおこることは稀ですが,主に創部痛(肋間神経痛),術後肺炎,肺や気管支の切離した部位からの空気の漏れ(気管支瘻,肺瘻),膿胸,声のかすれ(反回神経麻痺),間質性肺炎の急性増悪などがあります。ただし退院時にはその危険はほぼ乗り越えた状態となっています。

《広報誌「もみじ117号(2018.11)」に掲載した内容を再編集しました(2023.1)》

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