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気管支喘息

石川 暢久

石川 暢久

日本内科学会認定内科医・総合内科専門医・指導医
日本呼吸器学会専門医・指導医
日本呼吸器内視鏡学会専門医・指導医
日本臨床腫瘍学会暫定指導医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
インフェクションコントロールドクター
広島大学医学部臨床教授
臨床研修指導医養成講習会修了
日本内科学会内科救急(JMECC)インストラクター
The Best Doctors in Japan 2018-2019
2008年度日本癌学会学術賞奨励賞受賞
「肺癌の新規血清診断バイオマーカーの同定と臨床応用に関する研究」

専門

呼吸器内科
間質性肺炎・肺がん・難治性喘息・慢性閉塞性肺疾患

気管支喘息とは

「気管支喘息」というとどのような病気と思われるでしょうか? アレルギーなどが原因で発作性に気管支が狭くなり,ぜーぜー(喘鳴)という呼吸とともに息が苦しくなる病気というイメージがあるのではないでしょうか。実は,気管支喘息という病気の原因は気道(空気の通り道:気管支)の慢性的な炎症であることが分かっています。

気管支喘息の患者さんの気道では,アレルギーなどを原因として気道に炎症が起こっており,その炎症が引き金となって,気管支攣縮,咳,痰などを生じます。そして,適切な治療を行わず気道炎症がつづけば,気道は硬く厚くなり(気道リモデリング),気管支はさらに狭くなってしまいます。そうなると,軽い気管支攣縮でも喘鳴が生じたり,発作が起こっていなくても喘鳴が出たりするようになり,呼吸困難が改善しにくくなります。

気管支喘息の診断

気管支喘息にはいわゆる「診断基準」が存在しません。「喘息予防・管理ガイドライン 2018」では「喘息診断の目安」として,発作性の呼吸困難,喘鳴,胸苦しさ,咳,可逆性の気流制限などが挙げられています。最近では,呼気中の一酸化窒素濃度(FeNO)を測定することにより,気道炎症の有無を判定する方法が普及しています。これらを総合的に判断して気管支喘息と診断します。

気管支喘息の治療

気管支喘息の原因が気道炎症であるため,その治療は炎症を抑えることが重要となります。気管支喘息治療の第一選択は吸入ステロイド薬です。吸入ステロイド薬は,気道に直接作用することによって気道炎症を強力に抑えます。吸入ステロイド薬が喘息治療の第一選択となる以前の1990年代には,喘息死は年6,000人程度でしたが,2016年には1,454人まで減少しています。

現在,吸入ステロイド薬は各メーカーから様々な剤型が発売されており,患者さんひとりひとりにあった薬剤を選択することができます。特に,小児・高齢者では正しく吸入ができていなかったため,喘息コントロールが悪化してしまうことがしばしば見受けられ,定期的に吸入方法を確認することが必要となります。吸入方法が難しければ他の剤型に変更するなどの工夫をします。

吸入ステロイド薬

最近,「咳喘息」という病気が知られるようになっています。咳喘息とは喘息の一型で,喘鳴や呼吸困難発作を示さず,呼吸機能検査が正常であるにも拘わらず,慢性の空咳(痰を伴わない咳)を唯一の症状とする疾患です。

わが国の慢性の咳の半数以上がこの咳喘息によると報告されています。喘息の前段階あるいは軽症型として位置づけられ,その3分の1は典型的気管支喘息に移行すると言われています。咳喘息も,気管支喘息同様吸入ステロイド薬を中心とした治療が必要となります。

気管支喘息の新しい治療

吸入ステロイド療法の普及により,大部分の気管支喘息患者は気管支喘息発作の予防が可能となり,入院患者は激減していますが喘息患者数は増加しています。また,国内の気管支喘息患者の中の約5-10%は,高用量の吸入ステロイド薬による治療を行っていても,十分なコントロールが得られていません。

難治性喘息(重症喘息)に対する治療

高用量の吸入ステロイド薬による治療を行っていても十分なコントロールを得られない患者は,難治性喘息(重症喘息)と定義されます。

難治性喘息に対しては,気道の炎症を起こす原因であるアレルギー反応の源流を抑える「抗体薬」を使用した治療を1~2カ月に1度行うことによって,今までの吸入薬を使っても残っている症状をコントロールして,健やかな日常生活を送ることが期待できます。

生物学的製剤

現在,気管支喘息では4つの生物学的製剤,抗IgE抗体(ゾレア®:オマリズマブ),抗IL-5抗体(ヌーカラ®:メポリズマブ),抗IL-5受容体α抗体(ファセンラ®:ベンラリツマブ)ならびに抗IL-4受容体α抗体(デュピクエント®:デュピルマブ)が使用できます。

近年では,気管支喘息は「アレルギー(アトピー)型」「好酸球優位型」「肺機能低下型」「好中球優位型」といったいくつかのフェノタイプ(表現型)に分類されています。さらにフェノタイプ別に,それぞれ適した生物学的製剤による治療の可能性が提唱されております。

オマリズマブは「アレルギー(アトピー)型」の原因であるIgEの受容体に対する結合位置を認識し,受容体の代わりに結合して,IgEの効力をなくす効果があります。それにより,好塩基球や肥満細胞から放出されるヒスタミンなどの炎症を引き起こす物質の放出を抑制して,アレルギー反応を阻止します。

また,気管支喘息患者さんの気道粘膜には好酸球が増加しています。好酸球は強力な炎症惹起作用に加え, TGF-βなどの線維化サイトカインによる気道リモデリング形成も促進し,気管支喘息重症化にも強く関わっています。IL-5は好酸球の分化促進,骨髄から血中への動員に関与するとともに,気管支喘息においては気道組織への好酸球浸潤に関与していることが示されています。ヌーカラとファセンラは,好酸球を減らすことで「好酸球優位型」に効果を示します。

デュピクセントは,IL-4やIL-13によるシグナル伝達を阻害することで炎症に関与する2型炎症反応を抑制する薬剤で,「アレルギー(アトピー)型」と「好酸球優位型」に有効です。

これらの抗体薬は重症喘息には非常に有用であり,喘息症状の改善,喘息発作回数の減少,入院回数の減少,全身ステロイドの減量が可能となっています。「難治性喘息診断と治療の手引き2019」では,これらの生物学的製剤は全身ステロイドに優先して導入されるべき長期管理薬と位置付けられております。

重症喘息でお悩みの場合,是非一度ご相談ください。

《広報誌「もみじ108号(2018.2)」に掲載した内容を再編集しました(2019.5)》

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