| 1) |
初診:新生児科あるいは小児科で全身状態の精査を行います。合併症のあるお子さまでは,小児科などと協力して治療方針を立てていきます。当院での受診が困難な場合は,地域の病院を受診していただきます。 |
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哺乳指導:口蓋裂のお子さまに対して,ミルクを飲みやすくするためのゴム乳首の改善や,口蓋裂用ゴム乳首の使用などのご指導をします。 |
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| (図2 ホッツ床) |
ホッツ床の作成・装着:口蓋裂のお子さまの哺乳改善,舌の位置異常の改善,鼻の粘膜の保護,上顎の発育誘導を目的に,ホッツ床を作成・装着します。ホッツ床は生後できるだけ早い時期に,お子さまの上顎の型を取って製作します。柔らかい樹脂でできた入れ歯のような装置です(図2)。だいたい3ヶ月ごとに作り直しを行い,生後10〜12ヶ月まで装着します。 |
| 4) |
口唇裂の手術
手術時期:できるだけ早期の手術を提唱する施設もありますが,形態や機能の回復のために,より正確な手術を行うには,やはりお子さまの成長を待ってから行うのが良いと考えています。当科では生後3ヶ月以後,体重5kgを目安に手術を行っています。入院期間は10日前後になります。
手術法:片側性唇裂と両側性唇裂で,手術法は異なります。 |
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(1)片側性唇裂
当科では,ミラード変法という手術法を用いています(図3−1〜4)。

(図3−1 切開線) |

(図3−2 鼻腔内の切開線) |

(図3−3 鼻孔底形成) |

(図3−4 完成) |
片側性唇裂では,患側の鼻翼は扁平になり,鼻翼基部は下方,後方に偏位しています。さらに鼻柱は健側に偏位し,口唇も吊り上った状態になっています(図4)。手術後は,鼻や口唇の形態がほぼ満足できるように回復しています(図5−1,2)。しかし,高度な完全唇裂では,初回の手術だけで完全な形態が完成するとは限らず,就学前あるいは青年期に,鼻や口唇の修正手術を必要とすることがあります。

(図4 片側性唇裂) |

(図5−1 術前) |

(図5−2 術後) |
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(2)両側性唇裂
両側性の場合,裂の状態によって両側同時に手術する場合と,片側ずつ2回に分けて手術する場合があります。2回に分けて手術する場合は,生後3ヶ月頃に1回目の手術を行い,約2ヶ月後にもう一方の手術を行います。両側同時形成の場合,当科では,ミューリケン法という手術法を用いております。両側唇裂では鼻柱が短く,鼻翼は両側とも扁平になっています(図6)。手術後は口唇,鼻の形態は左右対称でほぼ良好ですが,鼻柱の短さは改善困難です(図7)。

(図6 両側性唇裂) |

(図7 両側性唇裂 術後) |
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耳鼻咽喉科の受診
生後7〜8ヶ月頃に,耳鼻咽喉科を受診し,中耳炎の有無の精査や,必要があれば中耳炎の治療を開始します。 |
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口蓋裂の手術
当科では,1歳〜1歳2ヶ月に口蓋裂の手術を行っています。この時期に手術をするのは,発音機能と上顎の発育への影響の両面を考慮した結果です。手術が早いと発音機能は良くなり易いのですが,上顎骨の発育が著しく障害されてしまいます。入院期間は10日前後です。 |
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(1)手術法
手術法は,プッシュバック法とファーロー法の2種類を用いています。どちらも発音機能の回復は良好で,85%以上の正常言語獲得ができています。口蓋裂の手術は,単に口蓋の破裂部を閉鎖するのではなく,鼻咽腔閉鎖機能に重要な働きをする口蓋帆挙筋という軟口蓋の筋肉を正常な位置に戻して,左右の筋肉を繋げることが重要です。さらに軟口蓋の長さも延長する必要があります。
このため,プッシュバック法では硬口蓋前方部から粘膜骨膜弁を剥離し,それを後方移動することで軟口蓋を延長します。左右の口蓋帆挙筋は断端同士で縫合されます(図8−1〜4)。

(図8−1 設計図) |

(図8−2 剥離) |

(図8−3 縫合) |

(図8−4 完成) |
一方,ファーロー法では軟口蓋の鼻腔側,口腔側の両方にZ形成といわれる切開を加えて,軟口蓋を延長します。左右の口蓋帆挙筋は重ね合わせられ,繋がることになります(図9−1〜4)。

(図9−1 設計図) |

(図9−2 切開) |

(図9−3 鼻腔側の縫合) |

(図9−4 完成) |
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(2)手術法の比較
プッシュバック法は,古くから多くの施設で行われている方法で,正常言語獲得の成績も良好です。しかし,先の手術法のところで説明したように,硬口蓋の粘膜骨膜弁を広範に剥離し後方移動するため,術後に骨の露出面が大きくなります。このため上顎骨の発育が障害され,反対咬合(受け口)になる可能性が高いと言われています。
一方,ファーロー法は,硬口蓋の骨露出がほとんどないため,上顎骨の発育障害が少ないと言われています。発音機能の回復はプッシュバック法と変わらないため,優れた方法と言えます。しかし,一期的に硬口蓋も形成すると裂隙幅の大きい症例ではやはり骨露出が大きくなり,軟口蓋の延長も困難となります。この欠点を補い,ファーロー法の利点を生かすため,当科では,1歳時にファーロー法で軟口蓋閉鎖を行い,その6ヵ月後に硬口蓋を閉鎖する手術を行うという2段階の口蓋裂形成法を行っています。 |
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言語治療
正常言語獲得のためには,適切な時期に適切な手術を行うことが必須ですが,口蓋裂の手術の後,言語治療を行うことでさらに良好な発音機能を獲得できます。
そこで,術前から言語治療の先生に診察していただき,口蓋裂の手術後も鼻咽腔閉鎖機能の状態や言語発育の状態を観察し,良い時期に言語治療を行ってもらうことになります。当科では,主として当院小児感覚器科,広島大学病院言語治療科に言語治療を依頼しています。通院が困難な方には,近隣の病院の言語治療科に紹介をさせていただきます。
口蓋裂の手術後は,できるだけ早く吸う,吹くなど鼻咽腔閉鎖機能の訓練を開始します。言語治療にうまく取り組めるようになるのは,大体4歳ぐらいですので,その頃から本格的な治療,訓練を行うようになります。小学校入学前後に,ほぼ正常言語の獲得ができると言われています。 |
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口唇,外鼻の修正手術

(図10−1 外鼻修正術前) |

(図10−2 術後) |
初回の口唇裂の形成手術後,口唇や鼻の変形が残ったり,瘢痕が目立ったりした時には,小学校就学前(幼稚園の年長時)に修正手術をします。より良い形態に修正することで,お子さまが自分のお顔を気にすることなく,快適な学童生活を送れるようにするためです。鼻の修正は変形した鼻軟骨を露出して,正常な位置に修正,縫合することを行いますが,大がかりな修正術は,鼻軟骨の発育がほぼ終了する高校生頃に行うことになります(図10−1,2)。 |
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歯列矯正治療と小児歯科の治療
歯並びの治療の開始時期は,反対咬合(受け口)や歯列不整の状況によって変わります。反対咬合が著明な時には,乳歯の時期(大体4歳ごろ)から矯正治療を開始することがあります。口蓋裂のお子さまは上顎の発育が悪いため,上顎の歯列の拡大が必要なことも多いです。歯科矯正治療は当院ではできませんので,広島大学病院歯科矯正科や,唇顎口蓋裂のお子さまの矯正治療の経験豊富な歯科医院に紹介させていただき,当科との協力体制で治療を進めるようになります。なお,唇顎口蓋裂のお子さまの歯科矯正治療は健康保険が適応されます。
また,歯科治療に慣れていただくことと,口腔の清掃や虫歯治療の管理をしていただく目的で,小児歯科にも紹介させていただき,同じように当科との協力体制で治療を進めます。 |
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顎裂への骨移植手術
上顎の歯が生えて来る部分(歯槽部)に裂がある場合(これを顎裂と言います),裂部の骨が欠損していますので,歯並びの治療を行っても,顎裂部に隙間なく歯を並べることができません。そこで顎裂に骨の移植を行って,歯槽部の骨の連続性を回復してあげると,顎裂部にも歯を移動することが可能になります。永久歯の側切歯や犬歯の萌出時期で個人差はありますが,8歳から10歳頃に顎裂部の骨移植術を行います。移植する骨は腸骨という骨盤の骨から採取するようになりますので,術後しばらくは歩行時に痛がったりしますが,退院後は機能的な障害は残りません。 |
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顎矯正手術
歯並びの治療や顎裂部の骨移植などの治療を行っても,反対咬合が残った場合,手術で上顎骨を前方移動したり,下顎骨を後方移動したりして,反対咬合や顔貌の改善を図る顎矯正手術を行います。手術は下顎骨の発育がほぼ完了する18歳頃に行います。上顎骨や下顎骨を人工的に骨折させ,あらかじめレントゲン検査や歯の模型で計測することにより予測された良好な位置に,上顎骨や下顎骨を移動させて固定する手術です。この手術はかなりの出血を伴う手術ですので,当科では手術前に自己血を貯血して,出血に対応するようにしています。 |