教えてドクター

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手術の苦痛はさようなら,みんなで早く元気になろう!
新しい周術期管理法「イーラス」

みなさん,手術前後でつらかったことは何でしょうか? もっとも多い訴えは①痛い,②動けない,③食べれない,の3つだそうです。少し前までは,手術は痛いのが当たり前でした。手術の前後は食事が制限され,のどが渇いても水も飲めませんでした。術後はたくさんの管につながれて,ベッドで安静を強いられました。これらの治療に疑問を持ち,再調査を行ったのが北欧の外科医です。その結果,多くの治療は根拠のない方法だったことがわかりました。

痛いと動く気になりませんよね。食欲も回復せず,胃腸の運動も復調しません。筋肉はどんどん痩せて歩けなくなるかもしれません。食事をとらないと,腸粘膜のバリアー機能が低下して感染リスクは上がります(図1)。

【図1】

術後回復を阻害する因子

彼らは大腸がん患者さんを手始めに術前の絶食時間を減らし,術後はしっかり痛みをとり,早く動いて,早く食べる新しい管理法を作り,イーラス(ERAS)と命名しました。

その後の追跡調査で,早く動いて食べても腸を縫合した箇所が破綻することはなく,肺炎や膿瘍など合併症も減少し,早く元気に退院できることが確認されました(図2)

【図2】

術後の追跡調査

イーラスは適応手術を徐々に拡大して,わが国でも「術後回復強化プログラム」と訳されて普及しています。合併症が減少して早く元気に退院できれば,みなさんのお財布にも,国のお財布にもやさしく,本人も家族もハッピーですね。

当院では外科医,麻酔科医,歯科医,看護師,管理栄養士,薬剤師,臨床検査技師,理学療法士などの多職種が専門技量を持ち寄って,患者さんを中心にイーラスに取り組み,合併症減少と早期回復に効果をあげています(図3)。

【図3】

イーラス・プログラムと周術期チーム医療

術後回復強化プログラム-Enhanced Recovery After Surgery ; ERAS-

高度福祉制度を持つ先進国では,高齢化社会に伴う医療費高騰が共通の課題です。平成25年に厚生労働省は医療施設を役割分担すること,急性期病院は人的・物的資源を集中投入して早期家庭復帰・社会復帰を目指すことを述べています。

従来,周術期の絶飲食や安静は腸管縫合不全などの合併症防止に有効であると考えられていました。1990年代に北欧諸国の外科医は,技術が進んだ手術手技よりも周術期管理をマネージメントして術後成績を向上できると考え,慣習的管理方策が有効か再検証を始めました。医学的根拠のある管理方策をパッケージ化して周術期に施行し,術後合併症を低下させ回復を促進しようとする試みでEnhanced Recovery After Surgery ; ERAS(術後回復力強化プログラム;イーラス)と命名しました(図4)。

【図4】

EARS Society

◎周術期に特化して作成されたクリニカルパス
◎病院規模ではなく,学術団体レベルで検証が行われ推奨されている

最初に大腸がん手術で導入し,臨床試験で有効性が証明され,わが国で注目されるようになったのは2010年頃からです。

コンセプトは絶食期間短縮と早期経口摂取,確実な疼痛管理と早期離床による合併症減少と回復促進です。絶飲食は腸粘膜の萎縮と腸内細菌叢の変化をきたし,粘膜バリアー機能が低下して術後感染症の原因になります。また腸管吻合後早期に食事を摂取しても縫合不全リスクは増加しないことが証明されていますし,食事刺激が腸管蠕動を促進することも分かっています。不十分な鎮痛では離床は進まず,術後血栓症や肺炎,腸閉塞,せん妄などのリスクが上昇し,高齢者の筋力低下は運動能力低下に直結します。ERASでは副作用を減らし確実な鎮痛を得るため,複数の鎮痛手段を併用する多角的鎮痛法を行って離床促進を推奨しています(図5)。

【図5】

EARS概念図

ERASは大腸がんに始まり,膵臓,胃,肝,泌尿器,婦人科,頭頸部外科手術などで,ERAS協会からプログラムが公開されています(表1)。

ERASプログラム【表1】

手術 公開年度
大腸切除 2012
膵頭十二指腸切除 2012
膀胱切除 2013
胃切除 2014
婦人科手術 2015
肝切除 2016
頭頚部がん手術 2016

Ljungqvist O.JAMA Surgery 2017

ERASは現代医療のニーズにフィットするため,今後ますます普及していくでしょう。

《広報誌「もみじ118号(2018.2)」に掲載した内容を再編集しました(2023.1)》

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