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CTを用いた虚血性心疾患に対する新たな診断法

虚血性心疾患とは?

虚血性心疾患とは,心臓に栄養を運ぶための血液を送る冠状動脈(冠動脈)に動脈硬化がおこり,心臓(心筋)が十分な血液を得ることができず,酸素不足(虚血)となる病気です。大きくは急性心筋梗塞を含めた急性の状態と,冠動脈に狭窄(閉塞)が存在し,胸の痛みなどの症状は認めるが,安定した状態の慢性冠動脈疾患(安定狭心症)の2つに分けられます。

急性の場合はカテーテル検査を行い,血行再建術といった冠動脈狭窄部に風船(バルーン)や金属の筒(ステント)を使い拡張するカテーテル手術や,迂回路をつくるバイパス手術を行うことが一般的ですが,安定狭心症の場合には治療方法として薬物療法,血行再建術の2つがあります。

治療の方針を決定する上で冠動脈の見た目の狭さだけではなく,実際に心筋が虚血に陥っているかどうかも重要です。

CTを用いた虚血性心疾患に対する診断

虚血性心疾患の診断において,CTでの評価は冠動脈の見た目の狭さを評価するうえではカテーテルに比べて低侵襲で行うことができ,入院の必要もありません。そのため診断ツールとして飛躍的に増えています。

しかしながらCTでの評価は,狭くなっている場所が石みたいに固くなっている(石灰化)場合や,多量の動脈硬化のゴミがたまっている部位などは狭窄度を過大評価する傾向があります。その場合,以前はカテーテルを用いた評価や,運動や薬物により心臓に負荷をかけて虚血を評価する負荷血流心筋シンチグラフィーといった別の検査を追加する必要がありました。

この度,当院に導入したFFRCTという検査法は,撮影したCTデータを専門施設に送ることで,追加の検査なく虚血の評価が行うことが可能である画期的なシステムです。結果は専門の施設に画像を送信後,平均4時間程度で返却されます。解析に対して追加の費用はかかりますが,わかりやすく虚血の重症度を見ることができ,この結果を見て治療方針を決めることが可能です。

このシステムの導入には細かな導入基準があり,どこの施設でも導入できるわけではありません。当院は広島県内で初めてこのシステムを導入しました。(2020年1月末現在においては,県内唯一の施設です)

健診や病院で虚血性心疾患を指摘されるようなことがあれば,最新の方法を含めた適切な方法で診断し治療方針を決定していきますので,当院循環器内科に一度相談してください。

FFRCTにおける診断

慢性冠動脈疾患(安定狭心症)に対する治療に関しては,多くの研究結果から長期予後や医療経済的な費用対効果の面において,心筋虚血評価が重要であることが知られています。

安定狭心症に対するカテーテルによる経皮的冠動脈形成術の保険適応基準が2018年4月より改訂され,機能的虚血評価のための検査を実施し,虚血が確認されている狭窄病変に施行という項目が設けられています。

心筋虚血評価の方法には,運動負荷心電図検査,負荷心エコー図検査,負荷血流心筋シンチグラフィー検査,直接的に冠動脈内にワイヤーを挿入し狭窄部前後の冠動脈内圧を用いて評価する冠血流予備比(FFR:Fractional Flow Reserve)や瞬時冠内圧比(iFR:instantaneous wave-free ratio)といった評価法があります。

運動負荷心電図はfirst stepの評価にはなりますが,虚血部位の特定は困難であり,偽陽性率も比較的高い検査です。そのため血行再建治療適応部位には,負荷血流シンチグラフィー検査や侵襲的なFFRおよびiFRといった評価が行われています。

この度当院に導入したFFRCTという新たな評価法は,解剖学的な狭窄を低侵襲で評価する通常の心臓CT検査画像のデータを専門施設(HeartFlow社)へ送信することで,そのデータから計算流体学などを元に追加の被ばくや造影剤の追加使用もなく,非侵襲的にFFR値が算出されます。その解析結果は当院へ電子媒体を通じて送信されます。

2018年12月1日より保険適応となっており,費用としては心臓CT画像と含めて3割負担で約3万円程度であり,概ね負荷血流心筋シンチグラフィー検査と同様ですが,1つの検査で解剖学的狭窄度および機能的虚血評価の両方が評価可能です。

多くの研究結果から侵襲的なFFR検査を基準とすると,心臓CTのみの検査に比べて明らかに診断精度が改善するだけではなく,負荷心筋シンチグラフィーや侵襲的な冠動脈造影検査と比べても,同等以上の正診率が報告されています。また1年のレジストリー検査も報告されており,FFRCTが0.8以上であれば少なくとも3か月の心血管イベントはなく,0.8以上の症例は0.8未満の症例と比べて心血管イベントを発症する率も有意に低いことが報告されています。そのため不要な冠動脈造影検査を減らすことが可能であり,血行再建適応のゲートキーパーになるだけではなく,積極的な薬物療法のゲートキーパーになるものと期待されます。

しかしながら,すべてのケースで評価可能というわけではなく,CT画像にアーチファクトの多い例や,ステントがすでに留置された例,バイパス術後症例などは現時点では評価できません。患者さんごとに適切な評価法を考える必要がありますが,当院ではその他の検査機器も充実していますので,虚血性心疾患および疑いの患者さんがいれば,一度御紹介していただければと思います。

心臓CT血管造影+FFRCT解析は,1回の診察で解剖学的および機能病変的な情報の双方を提供できる,唯一の非侵襲的な心臓検査です。

《広報誌「もみじ133号(2020.3)」に掲載した内容を再編集しました(2020.8)》

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