泌尿器科

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精索静脈瘤

精索静脈瘤とは何ですか?

精巣から流出した細かな静脈(つる状静脈叢)は次第に合流して内精索静脈となります。精索静脈瘤は,この内精索静脈を血流が逆流し,陰のうやそけい菅内のつる状静脈叢に血液がうっ滞した (異常にふくらんだ)状態のことです。

精索静脈瘤の問題点は何ですか?

精索静脈瘤のいちばん大きい問題点は,造精機能(精子を作り出す働き)が低下することがあり,男性不妊症(子どもができなくなる)の原因となることです。男性不妊の患者さんの場合,40%以上に認められると言われています。

また,まれに陰嚢やそけい部の疼痛や違和感,不快感の原因となります。

精索静脈瘤はどうして起こるのですか?

1.解剖学的特徴

左精巣静脈は右よりも長く,左の腎臓の静脈に直角に合流し,さらに左腎静脈が大動脈と上腸間膜動脈の間にはさまれて圧迫される(ナットクラッカー現象:クルミ割り器のように血管がはさまれる)ことがあり,静脈の圧力が高くなる

2.弁の問題

精巣静脈の逆流をふせぐ弁のしくみが不十分で,静脈血が精巣へむかって逆流をしてしまう

以上が,静脈瘤ができる原因と推測されています。

精索静脈瘤の頻度はどうでしょうか?

発症年齢は10歳未満ではほとんど見られませんが,10~15歳の時期に増加し,成人男性では約15%に発見されます。男性不妊の患者さんの場合,40%以上に認められると言われています。

左が90%,両側性が2~10%で,右はまれです。

精索静脈瘤の症状にはどのようなものがありますか?

主な症状

  • ●男性不妊
    精索静脈瘤は精巣の温度上昇,副腎からの内分泌物質(ホルモン)の逆流,免疫状態の変化などにより,精細管(せいさいかん:精子を作る場所)の障害や精子の成熟をさまたげるとされ,造精機能(精子を作り出す働き)の低下,さらには男性不妊症(子どもができなくなる)の原因となると一般に考えられています。

その他の症状

  • ●陰嚢やそけい部の疼痛や違和感,不快感
  • ●精巣の発育障害,萎縮

精索静脈瘤は健康状態自体には影響しないと考えられています。

精索静脈瘤の診断にはどのようなものがありますか?

診断は触診(さわる),視診(よくみる)でほぼ診断は可能です。

また,超音波検査によって血管がスイスチーズのように膨らんで見えたり,カラードプラー(血液の流れをみる)により血液の逆流所見が確認され,これは精索静脈瘤に特徴的な所見と言われています。

精索静脈瘤の程度分類はどうですか?

立位で,息をこらえてお腹に強く力を入れることで初めて触ることができる軽度のもの(グレード1)から,立位での視診,触診のみでわかるもの(グレード2),さらには目で見ただけで明らかなもの(グレード3)まであります。

精索静脈瘤の程度分類

グレード1 立位Valsalva負荷(腹圧負荷)で触診可能となる
グレード2 立位で容易に触診可能
グレード3 陰嚢,精索の視診のみで診断可能

精索静脈瘤の治療のメリットは?

グレードの高い精索静脈瘤がある男性不妊症の方に手術を行った場合,手術後50~60%の患者さんで精液所見(精子濃度または運動率など)の改善がみられ,手術後1~2年の自然妊娠率は約30%に上昇すると報告されています。

また,自然妊娠率の上昇のみでなく,人工授精,体外受精(IVF),顕微授精(ICSI)に対しても,精索静脈瘤の手術は良い影響を及ぼすことが報告されています。

精索静脈瘤の治療法は?

内精索静脈の血液が逆流,うっ滞することが精索静脈瘤の原因ですから,逆流を起こしている内精索静脈を鼠径管の上,または下で結紮切断したり,閉塞させて,血液が逆流しないようにすることが治療になります。

外科的治療

内精索静脈を鼠径管より上で切断する高位結紮術と,鼠径管より下で切断する低位結紮術があります。

経皮的静脈塞栓術

放射線科で精巣静脈に塞栓物質(コイルなど)を詰めて,血液が逆流しないようにします。

保存的治療

精索静脈瘤による血液のうっ滞や精液所見の改善には,ホルモン療法や漢方薬,サプリメントが有用なことがあります。

精索静脈瘤の外科的治療の適応は?

男子不妊症の場合

  • 1.不妊症の状態
  • 2.女性パートナーの妊娠機能が正常,または女性不妊の原因が治療可能
  • 3.男性パートナーに精索静脈瘤を認め,精液所見が悪い

以上の1~3の全てを満たす場合,手術適応と考えられます。

不妊症以外の成人や小児の場合

グレードの高い精索静脈瘤があり,陰嚢の難治性の疼痛や違和感,不快感がある場合や,小児では精巣の発育障害・萎縮がある場合,手術適応と考えられています。しかし,症状が緩和するか,将来の不妊症を予防するかは不明です。そのため,不妊症以外においては明確な基準は定まっていません。

腹腔鏡手術とは

腹腔鏡下で精巣とつながる動静脈を遮断します。これにより,新たな血行路(血液の流れ)が形成され,血液のうっ滞が改善し,静脈瘤が消滅します。

メリット,デメリット

  • ●メリット:両側例では同一体位,手技で一度に施行できること
  • ●デメリット:動脈やリンパ管の温存はやや難しく,陰嚢水腫の発生率がやや高い(5~12%)

精索静脈瘤の腹腔鏡手術の合併症は?

  • ●術後創部の疼痛,術前の症状の持続や残存:
    術後創部の疼痛は通常は手術後数日で軽くなりますが,時に数ヶ月にわたり痛みが続くことがあります。また,術前からの陰嚢の疼痛や違和感が術後にも残存することもあります。
  • ●精索静脈瘤の後術再発や残存:5~15%
  • ●陰嚢水腫:5~12%
  • ●精巣萎縮
  • ●ポート部ヘルニア,臍ヘルニア
  • ●出血や感染症
  • ●局所炎症反応
  • ●他臓器損傷(腸管,血管,腹膜など)―まれに開腹術へ移行
  • ●血栓症(肺梗塞症,深部静脈血栓症,心筋梗塞,脳梗塞など)

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